昭和の高級品だったハムはなぜ消えた?日本人の食卓から見える50年の変化

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「昔はお歳暮といえばハムだった」
そんな話を聞いたことはありませんか。
今ではスーパーで手軽に買えるハムですが、昭和の時代には「ちょっと特別なごちそう」でした。プロ野球に日本ハムファイターズが誕生した背景にも、当時のハム人気が大きく関係しています。
しかし、時代が変わるにつれてハムの立ち位置も変化しました。
なぜハムは高級品から日常食品になったのでしょうか。そして現代では、健康面からどのように評価されているのでしょうか。
日本人の食卓の変化をたどりながら考えてみます。
昭和の初めまでハムは庶民の食べ物ではなかった
現在の感覚では想像しにくいのですが、明治から昭和初期にかけて、ハムは非常に高価な食品でした。
そもそも日本では長い間、肉食の習慣が限定的でした。
明治時代になって西洋文化が流入すると牛肉や豚肉を食べる習慣が広がり始めますが、まだ一般家庭では贅沢品でした。
ハムはさらに加工技術や保存技術が必要なため、生肉よりも高価です。
現代でいえば、
- 高級チーズ
- 高級ワイン
- 輸入生ハム
のような存在だったと考えると分かりやすいでしょう。
そのため、戦前の日本でハムを日常的に食べられる家庭は限られていました。
高度経済成長がハムを国民食にした
状況が大きく変わったのは昭和30年代以降です。
日本は高度経済成長期に入り、多くの家庭の所得が増加しました。
同時に、
- 食パン
- 牛乳
- 卵
- ハム
といった洋風の食生活が急速に普及します。
学校給食も大きな影響を与えました。
パン食が広まり、朝食にハムエッグやハムサンドを食べる家庭が増えていきます。
この時代のハムは、現代のような「ありふれた食品」ではありません。
むしろ、
「豊かになった日本を象徴する食品」
だったのです。
お歳暮の王様はハムだった
昭和40〜50年代を知る人なら、お歳暮やお中元で届くハムの詰め合わせを覚えているかもしれません。
大きな箱を開けると、
- ロースハム
- ボンレスハム
- ソーセージ
などがぎっしり入っています。
子どもたちは大喜びでした。
当時は冷蔵庫が今ほど大型ではなく、肉を大量に保存することも容易ではありません。
保存性が高く、見栄えもするハムギフトは非常に重宝されました。
現在なら高級フルーツや高級スイーツを贈る感覚に近いでしょう。
ハムは単なる食品ではなく、
「豊かさの象徴」
だったのです。
日本ハムがプロ野球チームを持てた理由
1970年代、日本ハムは急成長企業でした。
そこで知名度向上のためにプロ野球球団を取得し、「日本ハムファイターズ」が誕生します。
今の若い世代から見ると、
「なぜハム会社がプロ野球チームを持つの?」
と思うかもしれません。
しかし当時の日本人にとって、ハムは非常に身近で人気の高い商品でした。
現在で例えるなら、
- コンビニ大手
- 通信会社
- 自動車メーカー
が球団を持つような感覚です。
つまり、日本ハムが球団経営に乗り出せた背景には、昭和のハムブームがあったのです。
ハム人気はなぜ下がったのか
では、なぜ現代では昭和ほどの存在感がなくなったのでしょうか。
理由はいくつかあります。
① 特別感がなくなった
最大の理由はこれです。
かつては高級品だったハムが、誰でも買える食品になりました。
特別な日に食べるものから、日常食品へと変わったのです。
人は慣れると感動しなくなります。
これはハムに限らず、
- バナナ
- 牛肉
- チョコレート
などにも共通しています。
② ソーセージやベーコンに需要が分散した
昭和後期以降、食生活はさらに多様化しました。
- ウインナー
- ベーコン
- 冷凍食品
- レトルト食品
などが普及し、ハムだけが特別な存在ではなくなりました。
現在の子どもにとっては、ロースハムよりもウインナーの方が身近かもしれません。
③ 贈答文化そのものが縮小した
お歳暮やお中元を送る習慣も減少しています。
企業間の贈答も縮小し、個人でも送らない人が増えました。
結果として、かつて巨大市場だった「ハムギフト市場」も縮小しました。
それでもハムは消えていない
「ハムは消えた」と言っても、実際にはそうではありません。
スーパーへ行けば必ず売っていますし、多くの家庭で利用されています。
朝食のサンドイッチやサラダなどに使いやすく、家庭購入率も高い食品です。
つまり、
高級品から日用品になった
だけなのです。
昭和のようなスター選手ではなくなりましたが、今も食卓を支える脇役として活躍しています。
ハムの健康問題が注目されるようになった
近年、ハムに対する見方を変えた大きな要因が健康問題です。
ハムやベーコン、ソーセージは「加工肉」と呼ばれます。
加工肉には保存性を高めるために、
- 食塩
- 発色剤
- 保存料
などが使用されることがあります。
2015年には、WHOの関連機関である国際がん研究機関(IARC)が加工肉を発がん性のあるグループ1に分類したことで大きな話題になりました。
この発表だけを聞くと不安になりますが、誤解もあります。
重要なのは、
「大量に食べ続けた場合のリスクが高まる」
という点です。
加工肉を毎日大量に摂取する生活と、時々食べる生活では話が違います。
ハムは食べてはいけないのか?
結論から言えば、そこまで極端に心配する必要はありません。
実際、日本人の加工肉摂取量は欧米諸国ほど多くありません。
また、
- 野菜をしっかり食べる
- 運動する
- 肥満を防ぐ
- 禁煙する
といった生活習慣の影響の方がはるかに大きいと考えられています。
問題なのは、
- 朝はベーコン
- 昼はハムサンド
- 夜はソーセージ
のように毎日大量の加工肉を食べ続けることです。
適量であれば過度に恐れる必要はないでしょう。
日本人の食卓を映す鏡だったハム
ハムの歴史を振り返ると、日本社会の変化そのものが見えてきます。
戦前は高級品。
高度経済成長で憧れの食品へ。
昭和後期にはお歳暮の王様。
そして現在は日常の食材。
かつて「豊かさの象徴」だったハムは、その役目を終えました。
しかし、それはハムが消えたのではなく、日本人の生活がさらに豊かになった証拠でもあります。
スーパーで何気なく手に取るハムの裏側には、昭和から令和へ続く日本の食文化の歴史が詰まっているのです。
今朝のハムサンドを食べながら、そんな50年の変化に思いをはせてみるのも面白いかもしれません。


